ドラム式洗濯機の異音は異物混入とは限らない|分解して分かった本当の原因

越谷を拠点にドラム式洗濯機の分解清掃を行っている、しろまるジャパンの沼端です。
先日、お客様からこんなご相談をいただきました。
「最近、洗濯機から変な音がするんです。」
お使いの機種は、パナソニックのNA-VX8800L。VXシリーズの中でも、比較的初期にあたる機種です。
さらに詳しくお話を伺うと、
「実は2年くらい前に、洗剤ケースへ小さなキャップを落としてしまった気がして…。もしかしたら、それが原因なのかなと思って。」
とのことでした。
洗濯機の中へ物を落としてしまった経験がある方なら、「それが原因かもしれない」と思うのは自然なことです。
私もまずは、その可能性を頭に入れながら確認を始めました。
ドラムを回してみると…
ドラムを手でゆっくり回してみます。
すると、
「シャーー……」
何かが擦れているような音が聞こえました。
その瞬間、お客様が、
「その音です!その音がずっと気になっていたんです。」
とおっしゃいました。
これで、お客様が気になっていた異音を私も確認することができました。
その音を聞いた瞬間、現場で何度か経験した症状が頭をよぎりました。
「もしかすると、あの症状かもしれない。」
そんな予感はありました。
ただ、お客様から伺った「2年前にキャップを落としたかもしれない」というお話もあります。
経験だけで原因を決めつけることはできません。
思い込みで判断するのではなく、お客様のお話も一つの可能性として受け止め、一つずつ確認していく。
それが原因を見つける一番の近道です。
そこで、実際に分解して確認することにしました。
ドラムが見える状態まで分解を進めます。

ここまで分解して初めて、異物が残っているのか、それとも別の原因なのかを確認することができます。
分解して見えてきたもの
ドラムまで見える状態になると、最初に目に飛び込んできたのは、バランサーに付いた大きな擦り傷(バランサーは、ドラムの振動を抑える部品)でした。

「やっぱり…。」
しかし、お客様のお話では、2年前にキャップを落とした可能性があります。
もしそれが原因なら、内部のどこかに残っているはずです。
慎重に内部を確認していきましたが、探していたキャップは最後まで見つかりませんでした。
洗剤ケースに落ちた物は、どこへ行くのか
今回分解しても、お客様が気にされていたキャップは見つかりませんでした。
では、洗剤ケースに落ちた物は、その後どこへ行くのでしょうか。
洗剤ケースに落ちた物は、水路を通ってドラム槽へ流れ込みます。
その後の行き先として考えられるのは、主に次の3つです。
① 排水フィルターまで流れる
小さな物であれば、水の流れに乗って排水フィルターまで到達することがあります。
② 槽内や部品の隙間に残る
途中で引っ掛かり、槽内や周辺部品の隙間に留まるケースもあります。
③ 排水弁付近に挟まる
さらに流れた場合は、排水弁の開閉部分に挟まってしまうことがあります。
この場合は、
給水した水がそのまま排水される
時々だけ調子が悪くなる
といった症状が出ることもあります。
今回のように分解しても見つからない場合は、すでに排水された、あるいは別の場所へ移動している可能性も考えられます。
本当の原因はホコリの蓄積でした
一方で、バランサーの手前にある脱水受けカバーを確認すると、大量のホコリが詰まり、一部には穴が開いていました。

その瞬間、異音の原因がすべてつながりました。
ただ、先ほどから出てくる「バランサー」や「脱水受けカバー」と言われても、ピンとこない方も多いと思います。
ドラムの手前には脱水受けカバー、その奥にはバランサーという部品があります。
位置関係は、下の図の通りです。

脱水受けカバーには、水を流すための通路があります。
しかし、ホコリが大量に蓄積すると、その通路がふさがれてしまいます。
すると内部に水圧がかかり、プラスチック製の脱水受けカバーが少しずつ変形します。
変形したカバーが回転するバランサーと接触し続けることで摩擦が起こり、穴が開いてしまいます。
今回聞こえていた異音は、この脱水受けカバーとバランサーが擦れていた音でした。
最初は異物を疑っていましたが、実際の原因は長い時間をかけて蓄積したホコリだったのです。
ただ、ここまで蓄積が進んだ背景には、長年の使用による部品の経年劣化もあったと考えられます。
この症状は、この機種だけの話なのか
今回問題となった脱水受けカバーは、NA-VX7500〜VX9600番台を中心に、NA-SVX870/880/890、NA-VX5E2〜VX5E6、NA-VX700A/800A/900A/900Bなど、複数の機種で共通して使われている部品です。
そのため、同じ時期のVXシリーズをお使いの場合、似た症状が起こる可能性はあると考えられます。
現場で拝見している範囲でも、同じVXシリーズの機種で、似たような脱水受けカバーの削れや穴あきを目にすることが少なくありません。
一方で、後継にあたるLXシリーズでは構造が見直され、この症状が起こりにくくなっているという話もあります。
ただ、メーカーが公式に公表している情報ではないため、あくまで現場で見聞きしている範囲の話として捉えていただければと思います。
そのため、「ドラム式洗濯機であれば必ず起こる」というものではなく、機種や年式によって傾向に差がある、というのが現場での実感に近いです。
ホコリ以外の原因も考えられるのか
今回の主な原因はホコリの蓄積でしたが、脱水受けカバーとバランサーが接触する不具合は、ホコリだけが原因とは限りません。
もともとカバーとドラムのすき間が狭い設計の機種では、ホコリがそれほど溜まっていなくても、経年による振動や樹脂の劣化によって接触が起きることがあります。
また、今回のように洗剤ケースなどから入り込んだ小さな異物が、同じすき間に挟まることで、似たような症状につながるケースも考えられます。
「シャーシャーという音がする=ホコリが原因」と決めつけるのではなく、実際に分解して確認しないと、原因を特定するのは難しいというのが正直なところです。
ご自身でできることはあるのか
今回のような脱水受けカバーの不具合は、ドラムの外側、洗濯機の内部で起きています。
そのため、ドアを開けて目視できる範囲では、残念ながら確認することができません。
日頃からできることとしては、排水フィルターをこまめに掃除し、糸くずやホコリを溜め込まないようにすることが挙げられます。
とはいえ、これはあくまで予防であり、すでに変形や穴あきが起きてしまった部品を、ご自身で元に戻すことは難しいです。
もう一つ、今日からできることがあります。
ドアを開けて、ドラムを手でゆっくり回してみることです。
普段は運転音にまぎれて気づきにくい音も、静かな状態で回してみると、はっきり聞こえてくることがあります。
ただ、音の種類から原因を特定することは、正直に言って難しいです。
回転部の接触なのか、それとも別の場所で起きている不具合なのかは、実際に分解してみないと分かりません。
それでも、「いつもと違う音がしている」ことに早く気づけるかどうかは、その後の対応に大きく関わってきます。
「シャーシャー」「ガリガリ」といった、回転に連動する音が続くようであれば、無理に使い続けず、一度内部の状態を確認することをおすすめします。
異音が残った理由
今回はホコリを取り除いても、異音は改善しませんでした。
その理由は、すでに部品が傷んでしまっていたからです。
一度変形して穴が開いた脱水受けカバーは、清掃だけでは元に戻りません。
つまり、ホコリはあくまで「きっかけ」。
異音の原因は、その先で起きた部品の変形へ移ってしまっていたのです。
このように部品が傷んでしまうと、清掃だけで改善することは難しくなります。
このまま使い続けると、擦れによる摩耗はさらに進み、全方位シャワーの水流にも影響が出るなど、周辺部品にまで波及する可能性があります。
まとめ
今回、お客様は「2年前に落としたキャップが原因かもしれない」と考えられていました。
しかし、実際の原因は長年蓄積したホコリによって変形した脱水受けカバーでした。
洗濯機の異音は、異物だけが原因とは限りません。
「最近、洗濯機からいつもと違う音がする。」
そんな時は、部品が傷んでしまう前に、一度内部の状態を確認してみることをおすすめします。
しろまるジャパンでは、越谷を拠点に埼玉・東京・千葉エリアでドラム式洗濯機の分解清掃を行っています。
洗濯機は毎日使う家電です。だからこそ、不調を我慢しながら使い続ける必要はありません。
「うちの洗濯機は大丈夫かな?」そんな時は、お気軽にご相談ください。

